最高裁判所第二小法廷 昭和30年(オ)458号 判決 1957年6月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人清水正雄の上告理由について
第一点および第三点は結局原審における証拠の採否、事実認定を非難するに帰する。そして原判決は上告人は本件小切手を振出、交付し被上告人らの先代がその所持人となつたもので上告人に右小切手金支払義務があることを判示しているのであつて、原判決に第二点所論の如き理由を附さない違法があるとはいえない。
同第四点は原判決は職務の執行より除斥されるべき裁判官が関与した違法があると主張し本件の第一審における昭和二八年五月二一日の口頭弁論期日において裁判官高次三吉が証人上田一長の尋問をなしたこと、同裁判官が原判決の基本たる昭和三〇年三月四日の口頭弁論に関与していることはいずれも記録上明らかであるが、民訴三五条六号にいう「不服ヲ申立テラレタル前審ノ裁判ニ関与シタルトキ」とは前審の裁判自体に関与した場合をいうのであつて、前審における証拠調に関与しただけでは同条同号に該当するものと解すべきでない。そして同裁判官は本件第一審の裁判自体に関与していないことは記録上明らかであるから所論は採用に値しない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)